2014年12月28日日曜日

「世界」がホンジュラスの青少年暴力組織マラスのルポ掲載

 中米「北の三角形」を構成するグアテマラ、エル・サルバドール、オンドゥーラスでは、「マラス」と呼ばれる青年暴力結社が長らく幅を利かせている。彼らは、体中に刺青をするなど恐持てし、殺人をはじめ凶悪犯罪を厭わない。西北に隣接するメヒコにも根を張る。治安撹乱要因として、各国で麻薬マフィアとともに取締りの対象となってきた。

 この「マラス」をオンドゥーラスで取材したルポルタージュが、雑誌「世界」2015年1月号(岩波書店、発売中)に載っている。文・工藤律子、写真・篠田有史の、おなじみコンビの作。日本人が現地で「マラス」を取材し記事を書くことは、極めて稀だ。この点だけからも価値があるが、内容も豊かで、読む者は考えさせられる。つまり上質のルポである。

 極貧の日常に苦しみ病む青少年が「マラス」になるかならないかの分かれ目は何か。鍵は家庭・学校・社会の教育にある。当たり前のことだが、それがなかなか叶わないのが発展途上諸国だ。この記事には、元マラス要員、社会参加・復帰支援者らの生の声も綴られている。だから説得力がある。

 日本人は、中米というと「コスタ・リカ」とくる者が多い。経済人はパナマ運河拡張やニカラグア運河建設工事を気にする。だが、中米を暗く蝕んでいる深刻な社会問題にも目を向けてほしい。

 ラ米、とりわけ中米に関心のある人々や、メディア記者に、このルポを読むことをお勧めする。