2011年11月1日火曜日

悪名高い諜報機関解体

   コロンビアのフアン・サントス大統領は10月31日、大統領直属の諜報・謀略機関「公安庁(DAS=ダス)」を廃止する政令に署名、発令した。この日はDAS設立58周年記念日であり、その日に合わせた秘密警察の解体だった。

  DASは、要人暗殺、市民殺害、麻薬組織との連携、電話盗聴など膨大な数の違法事件に関与し、元DAS長官の何人かは逮捕されたり、有罪判決を受けたりしている。とくにウリーベ前政権下で、DASと極右準軍部隊(パラミリタレス)との連携による殺害事件や、DASによる組織的な政治家らへの電話盗聴・傍受事件が頻繁に行なわれていた事実が発覚した。世論の厳しい突き上げもあって、DAS解体は時間の問題となっていた。

  新たに諜報任務を担うのは、大統領直属の文民機関「国家情報局(ANI=アニ)」で、アルバロ・エチャンディーア退役提督が初代長官に就任する。

  DASの職員約6000人は、検察庁、外務省、内務省、国家警察に編入される。一部の<優秀な者>はANIに入るものとみられている。この人事異動は年末までに終了する。
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  私は1980年代後半から90年初めにかけて、<麻薬戦争>期のコロンビアを重点的に取材した。その折、当時のDAS長官にインタビューし、大統領候補ルイス・ガラン暗殺事件をはじめ重要事件について訊いた。後年その長官が、ガラン事件などさまざまな政治的謀略事件に関与していた事実が明るみに出て、愕然とした。不明ゆえに仕方ないことではあったが、悔恨の念にかられたものだ。

【私の<麻薬戦争>期のコロンビア取材ついては、拙著『コロンビア内戦ーーゲリラと麻薬と殺戮と』(2003年、論創社)を参照されたい。】

(2011年11月1日 伊高浩昭)