2011年11月24日木曜日

ラテンアメリカ(ラ米)乱反射

★☆★ラ米は、音楽、映画、舞踊、演劇、文学、建築、彫刻など芸術が実に豊かだ。日本には、音楽を中心に、その豊かなラ米文化を紹介する優れた月刊誌がある。言わずと知れた『LATINA(ラティーナ)』である。

    私は縁あって、2006年初めから毎月、この雑誌に「ラ米乱反射」を連載してきた。「乱反射=レフレクシオン・イレグラル」と名付けたのは、ラ米のあらゆる事象が乱れ飛び、衝突し、さまざまな方向に反射する、というような意味を込めてのことだ。

    第1回から第24回までは、単行本『ラ米取材帖』として、ラティーナ社から2010年5月に刊行された。

    いま、なぜ本稿を書くかと言えば、「乱反射」が、今月11月20日に発売された2011年12月号で70回に到達したからだ。一度も休載せず、毎回400字詰め原稿用紙16枚を書いてきた。

    第70回の主人口は、10月23日のアルゼンチン大統領選挙で圧勝し2選を果たした、クリスティーナ・フェルナンデス=デ・キルチネル大統領だ。

    「経済を政治に従属させた夫婦(めおと)政権」、「圧勝クリスティーナに暗雲迫る」という2本見出しを付けた。「夫婦政権」というのは、ご存じのとおり、昨年10月急死した夫ネストル・キルチネル前大統領と2人3脚で政権を運営していたからだ。

    私が1970年代初め、ブエノスアイレスでペロン復活期の政情を取材していたころ、夫妻は大学生だった。二人はペロン派青年部で知り合い、愛し合って結婚した。そして夫妻で政権に就いた。

    亜国(アルゼンチン)政治には、このようなロマンが時として伴い、開花する。

    『LATINA』の編集上のおはこは何と言ってもタンゴだが、この70回目の記事には、タンゴ街ボカの港に、ほんの少しだけ触れておいた。

(2011年11月24日 伊高浩昭執筆)