2011年11月17日木曜日

ノリエガ将軍22年ぶり帰国へ

ーーーーー1980年代のパナマで最高実力者だったマヌエル・ノリエガ退役将軍(77)がクリスマス前にパナマ市に戻ることが11月16日明らかになった。

       ノリエガ将軍はブッシュ米(父親)政権から敵視され、1989年12月、米軍の大規模な軍事侵攻で政権を追われ、パナマ市内のヴァティカン大使公邸に亡命したところを90年1月、米政府の圧力で引き出され、そのままマイアミに連行された。

       将軍は、コロンビアの麻薬組織「メデジンカルテル」と連携し巨額のコカイン密輸に関与したとして92年、禁錮40年の実刑判決を受けた。その後、30年、20年と減刑された。

       一方、フランスの法廷は、巨額の麻薬資金をパリで高級アパートを購入して洗浄したとして、将軍に禁錮7年の判決を下し、米国に身柄引き渡しを求めていた。

       将軍の身柄は2010年4月フランスに送られ、将軍はパリ郊外の刑務所に入れられた。だが今年9月、監視付きの保釈処分となった。パナマ政府は将軍の身柄引き渡しを要求しており、その審理がパリの法廷で始まっていた。焦点は、そこに移っていた。

       11月16日、米司法当局はパリの法廷に、将軍のパナマへの引き渡しに異議は唱えないと通告した。これによって最終的に、囚人としてではあるが将軍の帰国に道が開けた。

       23日には将軍のパナマ行きをめぐる法廷手続きが終わり、あとはパナマ・フランス間での身柄送還の準備だけとなった。パナマ政府は将軍の帰国に備え、厳戒態勢に入った。

       パナマには、72歳を超えた囚人は自宅軟禁処分にするという優遇措置がある。将軍は、該当する。だがパナマのリカルド・マルティネリ大統領は16日、滞在先のロンドンで、「家庭軟禁制度はあるが、収監されるだろう。しかし最終的には判事たちが決める」と述べた。

       パナマでは1985年に、ノリエガの政敵だったウーゴ・スパダフォラ(当時45)が暗殺され、ノリエガの関与が明らかになって、パナマの法廷は禁錮20年の実刑判決を下した。将軍は帰国すれば、この刑に服すことになるわけだ。
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       1980年代からのノリエガをめぐる事件の背後の闇は深い。いずれ続報を書きたい。

(2011年11月17~24日 伊高浩昭)