ニカラグアのダニエル・オルテガ大統領と、その夫人ロサリオ・ムリージョ副大統領は5月11日、同国カトリック司教会議(CEN)が前日提示していた「対話開始のための4条件」を受諾した、と発表した。
先月から首都マナグアをはじめ全国各地で、大学生、市民団体などによる反政府行動が続いており、非公式集計で11日までに「49人以上63人以下」が死亡している。経団連(COSEP)は、連続3期の長期支配を続けるオルテガ政権に対する反対行動を支持している。
レオポルド・ブレネス枢機卿が率いるCENは10日、①米州諸国機構(OEA)の米州人権委員会(CIDH)による4月以来の一連の事件における死傷者・弾圧状況・直接加害者特定などの調査実施②政府系準軍部隊の解体③弾圧の即時停止④政府による人権尊重に基づく対話意志表明ーの4条件を提示。14日までに回答するよう求めていた。
政府の条件受諾を受けて、「4月19日学生運動」(M19A)、COSEP、市民団体などは11日、対話参加を表明した。
陸軍も11日「市民弾圧には関与しない」と、「中立的立場」を表明。「対話でしか問題は解決しない」として、政府と反政府勢力の対話を支持した。
だが同日、マサヤ県ラ・コンセプシオン市の市庁舎が放火・破壊され、政権党FSLNの会合所も略奪された。国立自治大学(UNAN)、ニカラグア工科大学(UPOLI)の学生ら計2人も銃撃されるなどして死亡し、不穏な空気が依然支配している。
オルテガ政権筋は、今回の反政府騒乱状況が昨年4~6月ベネズエラで続いた反政府街頭暴力運動に酷似しているとし、米国など外部勢力の関与の可能性を指摘している。
だが同政権が重大局面に直面しているのは事実。14日以降に始まる対話がこじれれば、騒乱状況が再燃するのは疑いない。内外の反政府勢力は現状を、オルテガ政権打倒の一大好機と捉えているからだ。
▼メキシコで候補者19人殺される
7月1日の大統領選挙、下院議員・市長選挙などを前に選挙戦が展開されているメキシコ・グアナフアト州アパセオエルアルト市で5月11日、野党「国家刷新運動」(ARENA)の市長候補ホセ・アギーレが遊説中、銃弾6発を撃ち込まれて即死した。
これで前哨戦が始まった昨年9月以来、出馬予定者および候補が計19人殺害されたことになる。内訳は政権党PRIと野党PRD各5人、MORENAと前政権党PAN各3人、緑の党など3会派各1人。
うちアギーレ候補を含む4人は、今月4日以降、メヒコ、チウアウア、ゲレロ、グアナフアトの各州で殺害された。
MORENAはPRDから分派した中道左翼および左翼勢力の政党で、大統領選挙の最有力候補AMLO(アムロ)が党首を務めている。
▼ベネズエラ大統領選挙は野党候補統一が鍵
5月20日実施の大統領選挙の最新の支持率調査では、政権党PSUVなどの「祖国拡大戦線」(FAP)候補ニコラース・マドゥーロ現大統領が48・4%で最有力。
2番手は33・3%の「進歩主義前哨」(AP)など野党3党候補ヘンリー・ファルコン前ララ州知事。
3位は、「変化への希望」候補のハビエル・ベルトゥッチ福音派牧師で11・7%。2、3位の両候補の支持率を合わせれば48%で、マドゥーロと拮抗する。このためファルコンは野党候補統一を呼び掛けているが、ベルトゥッチは11日現在拒否している。
別の調査では、マドゥーロ51%、ファルコン28%、ベルトゥッチ16%。これも野党両候補を一本化すれば51%対44%で、接戦になりうる。
親米派で保守性の強いベルトゥッチがファルコンを嫌うのは、同候補がかつてチャベス派で、マドゥーロ体制に対し是々非々主義を貫いていたことなどによる。