2018年5月28日月曜日

 コロンビア大統領選挙の第1回投票終了▼ドゥケとペトロの両候補が決選進出★この国で極めて稀な左右対決へ▼ウリーベ前大統領に麻薬マフィア資金使用疑惑▼エル・サルバドール政権党が次期大統領候補選ぶ

 コロンビアで5月27日午前8時から午後4時まで、大統領選挙第1回投票が実施された。登用率は53%。5人が出馬したが、予想通り過半数得票者はなく、上位2人が6月17日の決選に進出することになった。当選者は8月7日就任する。任期は4年。

 開票率99%段階で、得票率はイバーン・ドゥケ39%、グスタボ・ペトロ25%。この2人が決選に進出する。現代コロンビアでは内戦が事実上なくなった状況での初の大統領選挙であり、右翼ドゥケと左翼ペトロの左右対決が決選で実現する。

 争点は、和平合意見直し、隣国ベネズエラ問題、国内貧富格差是正など。

 第1回投票の候補者:グスタボ・ペトロ(58)、「人間的コロンビア運動」、エコノミスト、左翼。イバーン・ドゥケ(41)、「民主中央」、弁護士、右翼。ウンベルト・デラカージェ、自由党。セルヒオ・ファハルド、「市民公約」。ヘルマン・バルガス=ジェラス、「バルガス・ジェラス より良い運動」。

  ドゥケは、前上院議員で、アルバロ・ウリーベ前大統領の後継候補。2016年11月の政府とゲリラ組織FARC(コロンビア革命軍。現在は政党FARC=人民革命代替勢力)との和平合意の見直しを訴えている。

 4月9日、ハバナでの和平交渉にも参加したFARC幹部ヘスース・サントゥリチ(本名セウシス・エルナンデス)がメキシコのシナロア麻薬マフィアと組んでコカインなどを米国に密輸する計画を進めていたとして逮捕された。
 米政府は6月7日までに、サントゥリチの身柄引渡をコロンビア政府に要請する方針。米国は、サントゥリチとシナロアマフィアとの策謀は16年12月で、和平合意のすんだ後のことであり、合意にあるFARC幹部らへの免罪・恩赦の規定は当てはまらない、との立場だ。

 この逮捕事件後、FARC和平交渉首席代表だった最高幹部の一人イバーン・マルケスは、和平合意が突然破られて逮捕される危険があるとの理由で、武装解除された元FARC要員が固まっている南部の密林地帯に避難した。
 和平合意により、政党FARCは7月の新国会開会時に、上下両院に5つずつ計10議席を与えられることになっている。サントゥリチもマルケスも、その10人に含まれている。 
 因みに、FARC最高指導者ロドリーゴ・ロンドーニョ(通称ティモェンコ)は病気などを理由に大統領選挙出馬を取り止めた。

 サントゥリチは、コロンビア産の麻薬を太平洋岸からメキシコ方面に船で運び出す計画で、この船舶輸送には和平に反対したFARC分派も関与していたとされる。
 同分派は3月、エクアドールのエル・コメルシオ紙取材班3人をコロンビア国境地帯で殺害した集団。事態は極めて複雑だ。政党FARCは、ドゥケが8月政権に就いたら、FARC弾圧が始まると予測、警戒を強めている。

 一方、ペトロは元ゲリラ「4月19日運動」(M19)要員で、元首都ボゴタ市長。公約に、石油・石炭など外貨収入源の輸出を抑え、農業拡大で代替する案や、大胆な農地改革、税制改革などを挙げている。いずれも富裕層には呑めない公約ばかりだ。
 ドゥケが代表する富裕層・保守・右翼勢力は、「ペトロはコロンビアをマドゥーロ政権のベネズエラのようにしようとしている」と虚偽宣伝に躍起だ。

 第1回投票で落選した3位以下は、ファハルド(得票率23・7%、元アンティオキア州知事、元メデジン市長)、バルガス=ジェラス(7%、サントス現大統領の後継候補)、デラカージェ(2%、元対FARC和平交渉政府首席代表)の順。

▼NYTがウリーベ前大統領と麻薬組織の関係報じる

 NYT紙は5月26日、解禁された米国務省外交文書を基に、1990年代前半、アルバロ・ウリーベ(後の大統領)はメデジン麻薬マフィアから選挙資金をもらっていたもよう、と報じた。

 当時のコロンビア自由党のルイス・ペレス上院議員が米外交官との会合で語ったとされる情報によれば、お尋ね者だったメデジン麻薬マフィアの頭目パブロ・エスコバル(故人)は当時のガビリア大統領との接触を図るため、選挙資金提供と引き換えに、同マフィア幹部のオチョア一家経由で大統領と連絡が取れるようにしてほしいと持ち掛けた。
 またウリーベは、エスコバルの母親と直接連絡を取った、という。ウリーベは、NYTの報道内容を否定している。

▼エル・サルバドール政権党が大統領候補選出

 ファラブンド・マルティ民族解放戦線(FMLN)は5月27日予備選挙を実施、2019年2月3日の大統領選挙に出馬する候補として、ウーゴ・マルティネス外相を選んだ。
 対立候補はジェラルド・マルティネス前公共事業相。外相は得票率70%強だった。