今から12年前の2002年3月、「NHKのど自慢チャンピオン大会」をテレビで観、ブエノスイアレス生まれの若い日系娘がグランドチャンピオンになったのに新鮮さを感じたことがある。その娘は沖縄系の大城バネサ。今は32歳。岐阜県羽島市に住む。
のど自慢での大賞獲得を契機に03年、日本で職業歌手になった。それから10年半、今も歌手を続けている。それも、演歌歌手なのだ。縁あって東京でバネサに会い、1時間話した。
私が亜国社会や沖縄を知っていることから、インタビューをLATINA誌から頼まれてのことだった。芸能記者に多く会ってきたバネサは、風変わりな老記者が現れたのに少し戸惑っていたようにも見受けられた。
いずれ記事になるから細部はここに記さない。私が学生時代に身につけた「総合ジャーナリズム」の立場から、この歌手にも会った。1時間質疑応答すれば、一人の人物の半生はおおよそ見当がつく。
30余年の若い人生を垣間見たわけだが、「一期一会」で終わるか、また会うことになるか、わからない。バネサを文章でどう形取るか、それを考えている。
話を聞くうちに、あの「チャンピオン大会」のテレビの情景をかすかに思い出した。私がメディア記者を引退した1ヶ月後、バネサは本格的に歌手稼業に入った。
異業種間の世代交代、つまり生きる者同士の一つの世代交代を感じた。どこにでもあることだが、これが、インタビューした収穫と言えるかもしれない。