2014年1月17日金曜日

ビオイ=カサーレス短編集を読む


 亜国人作家アドルフォ・ビオイ=カサーレス(1914~99)の短編集『パウリーナの思い出に』(高岡麻衣、野村竜仁共訳、2013年、国書刊行会)を読んだ。

 題名の作品(1948年)を含め10点が収められている。どれも面白い。幻想物も幾つかあるが、そうでないものや、幻想度の薄いものの方が多い。

 最後に出て来る『雪の偽証』(1948年)は、犯人が誰なのか、謎解きがある。アガサ・クリスティーの『アクロイド殺人事件』(1926年)を連想させる。クリスティーのこの作品から閃きを得て書いた可能性がある。

 ブエノスイアレスが舞台の作品が多い。この作家が愛した街であることがわかる。

 「この人の瞳は、これまで彼を愛したすべての女性の愛情と孤独を宿している」-このような洒落た記述もある。

 気分転換に短編を一作ずつ読むのは、実に好い時間だ。