2013年6月26日水曜日

ウィンパー著『アンデス登攀記』を読む


 英国人登山家エドゥワード・ウィンパー(1840~1911)の『アンデス登攀記』(1891、大貫良夫訳2004~05上下、岩波文庫)を読んだ。

ウィンパーが盟友ジャンアントワーヌ・カレルとともに、チンボラソ(6247m)、コトパクシ(5978m)をはじめエクアドールの8つの高峰に1880年登頂した時の記録である。

 山岳紀行・冒険文学と捉えて読んだが、面白かった。当時のエクアドールの政情、風俗、先住民の生き方・考え方などが、山よりも興味深かった。

 私はずいぶん前に、コトパクシを麓から仰いだことがある。「頂上に立ったら、さぞかし素晴らしい眺望が開けるだろう」と、叶わぬ願望が脳裏を過った。

 下巻の終わりの方に、高山病(ソロチェ)はなぜ起きるのか、という分析がある。高度ではなく気圧が下がること、つまり低圧が原因だ、と強調している。

 外部の気圧が下がると、体内のガスが膨張する。ガスは出口を求めて内圧を高め、血圧上昇を招く。激しい頭痛が起き、全身が不快感に包まれる。だが、外圧と内圧の均衡が回復すると、直ってしまう。

 ウィンパーの繊細な写実画が随所にちりばめられており、これも素晴らしい。マッターホルンの初登頂者であるウィンパーは、1871年に『アルプス登攀記』を出した。これも読まねばならなくなった。