2016年1月18日月曜日

ニカラグアでの米企業実態描くスウェーデン映画「バナナの逆襲」観る

 中米に連なる小さなバナナ生産国は「バナナ共和国」と呼ばれ、蔑まれてきた。かつてニカラグアもその一つだった。時は1979年のサンディニスタ革命前のアナスタシオ・ソモサ2世大統領独裁の末期。米果物野菜大手ドーンフード(旧スタンダードフルーツ)が、ニカラグアのバナナ農園で、不妊症を招く恐れのある農薬を散布し、米当局がその農薬使用に警告を発した後も同社はそれを使い続けた。

 スウェーデン人ジャーナリストで映画監督のフレドリック・ゲルテンは、同バナナ農場での農薬使用の凄じい実態を調査、被害者農民の代理人としてロサンジェルスの法廷に告訴した熱血のクーバ系弁護士フアン・ドミンゲスの動きを追う。ドミンゲスは企業相手の裁判で実績を重ねていた弁護士デュアン・ミラーと組み、企業実態を知らしめ賠償金獲得をも目指して闘い、一審で勝利する。

 ゲルデン監督は、上記の一部始終を描いた映画をロサンジェルス映画祭に出品したが、ドーン社の圧力で映画祭の枠外でしか上映されないことになる。やがて、監督は同社から訴えられる。しかしスウェーデンで監督と作品は支持され、有利な世論が拡がり、監督は勝訴する。

 敵と味方の弁護士の闘争、陪審員の態度、ニカラグア現地の表情、スェーデンでの支援の動きなどが絡み合い、観応えある白熱したドキュメンタリーとなっている。

 第1作「敏腕?弁護士ドミンゲス」(2009)、第2作「ゲルデン監督、訴えられる」(2011)は、いずれも87年分。事情をわかりやすくするため、第2作が先に上映される。

 ★2月17日から東京・渋谷文化村・ユーロスペースで公開される。配給は「きろくびと」。問い合わせ:03-3461-0211。

(サンディニスタ革命政権の80年代、新自由主義政権の90年代以降、2007年以降のサンディニスタ政権復活後、バナナ農園の労働実態はどう変化したのか。この「後日談」が何らかの形で示されていれば、もっとよかった。)