2016年1月21日木曜日

経済危機のベネズエラが多角的生産強化政策に着手

 ベネスエラで1月19日、「国家生産的経済理事会」(CNEP)が発足した。石油に頼り切ったうえ政策のまずさから苦境に陥っている経済を救うための活性化策だ。国公営企業や民間企業の代表を含む45人で構成されている。

 同理事会は、石油・天然ガス、油化、農食糧、鉱山、電気通信・電子情報機器、建設、工業、軍事産業、観光を重点部門としている。

 理事会議長に就任したアリストーブロ・イズトゥーリス副大統領は20日の初会合で、「石油一辺倒の経済は破綻した。社会政策の成果を失うことなく経済を飛躍的に向上させる方策を策定する」と述べた。

 新自由主義による解決法を否定、生産向上によって物資の自給自足化を促し、社会主義経済モデルの強化を狙う。チャベス前政権期に始まるコムーナ(コミューン=生活・居住・自治・生産共同体)が重視される。クーバに倣って、都市農業や家庭菜園も手掛けてゆく。

 天然ガスと石油の輸出を柱とし経済建設に成功しつつあるエボ・モラレス政権のボリビアが、参考モデルの一つとされる。また米国などから「経済制裁」され何とか凌いだイランや「制裁」されているロシアの経済も参考になるという。

 ベネスエラ経済は、規模(GDP)縮小、国際石油価格75%減、対外債務返済、備蓄外貨減少、超インフレ、物資不足、腐敗、官僚主義、内外からの妨害、犯罪激発で低迷している。歳出の6割方を占める社会政策と生産性向上策が矛盾する実態を、どう解決してゆくのかが中心的問題だ。

 ニコラース・マドゥーロ大統領の側近の一人、デルシー・ロドリゲス外相は19日、「大統領は経済多角化のために画期的な建設的対話を開始した」と、CNEP設立を讃えた。

 同外相は、スペインのラホーイ右翼政権の外相JMガルシアマルガージョが18日、「ベネスエラ情勢に関するスペイン政府の懸念を欧州連合(EU)外交理事会に伝える」と述べたのに対し、「内政干渉するな」と反撃した。

 ロドリゲスは、「ベネスエラは200年も昔にスペインから独立した。その解放者シモン・ボリーバルの祖国なのだ」と強調。「スペイン政府は、山積する自国の難題に取り組むべきだ」とやり返した。

 一方、カラカス首都区政府のリカルド・ドゥラン報道官は20日未明、市内の自宅に車で帰宅したところを3人組に急襲され、射殺された。諜報機関と警察は、暗殺か一般犯罪か、見極めるため捜査中。首都区政府は3日間の服喪を宣言した。

 カラカスでは7月、非同盟諸国運動首脳会議が開かれる。これに向けて治安強化が図られつつある。同会議にはパン・ギムン国連事務総長も出席を予定している。