荒了寛編著(1995年、平凡社)のこの本は、1941年12月の日本軍による真珠湾攻撃の日、突如として奈落の底に突き落とされた在米とりわけハワイの日系二世・日本人の苦しみと、そこから立ち上がり米軍の一員となってイタリア戦線でドイツ軍を撃破した日系二世部隊と、太平洋戦線で活躍した日本語解読班の在り方を、体験者の発言を基に詳述している。極めて優れた証言集だ。
二世部隊は戦争の勝者だった。だが彼らが欧州と太平洋で直面した生死の境は地獄だった。戦争は勝者にも敗者にも、そして巻き込まれた第三者にも悲惨の極みを与えずにはおかない。二世生存者らの証言は現代に通じるがゆえに、古典的発言である。
たまたま読み終えたころA紙夕刊で、ロサンジェルス在住の作家、米谷ふみ子(80代前半)の寄稿「目覚めよ! 75歳以上の年寄り」を読んだ。「戦争を覚えているのは75歳以上の人々だ。次世代の無知は、一重に、その残酷さを語り継がなかった私たち老人の責任であると気が付いた」と書かれている。
この記事の書き出しは、米国人インタビュアーがテレビ番組で語った「彼(安倍首相)は日本の平和憲法を変え、強い軍隊を作りたいと考えている」という言葉だ。
この寄稿の隣には、作家池澤夏樹の「第一次世界大戦の教訓 誰が薪を積むのか」が掲げられている。安倍を、そのダボスでの軽率な発言を基に厳しく批判している。
『ハワイ日系米兵』は、別の観点から戦争を告発している。重要な問題提起が幾つもある。多くの人々に読んでもらいたい本である。