2018年6月2日土曜日

 スペイン新首相にペドロ・サンチェス労社党(PSOE)書記長▼国会下院がM・ラホーイ首相を不信任▼ラ米に好影響

 スペイン国会下院は6月1日、マリア―ノ・ラホーイ首相(63)に対する不信任決議を採択。同首相は職位を失い、野党第1党「スペイン労働社会党」(PSOE=ぺソエ)のペドロ・サンチェス書記長(46)が新首相に決まった。

 下院定数は350。不信任決議には過半数の176議員の賛成が必要だが、180票集まった。PSOEの議席は84で、これに左翼ポデモス連合、カタルーニャ党、バスク民族党(PNV)が同調した。

 PNVを除く賛成票は175と半数だったが、PNVの5票が加わって180に達した。PNVは、中央政府がバスク州に5億4000万ユーロのインフラ投資をするというサンチェスの約束を多として賛成に回った。

 サンチェスは、軍事独裁者フランシスコ・フランコの1975年の死を経た民主化後、フェリーペ・ゴンサレス、ホセ=ルイス・ロドリゲス=サパテロに次ぐ3人目のPSOE首相となる。近く国王の認定をもって、正式に就任する。

 フランコ独裁の流れを汲む保守・右翼勢力の国民党(PP)党首だったラホーイは、ホセ=マリーア・アスナル元首相の後を受けて党首に就任。だが2004、08両年の総選挙に敗れ、サパテロ政権を2期許した。

 だが2011年12月、ようやく政権に就いた。リーマンショック後の経済危機で緊縮経済を余儀なくされ、さらにラホーイ自身も関与した疑惑が高まった腐敗事件で14年窮地に陥った。この時、ラホーイは英領ジブラルタル奪回問題を使ってナショナリズムを煽り、窮地を乗り切った。

 だが人気は落ち国民の経済不満も収まらず、15、16両年の総選挙で政権を失う危機にまたも陥ったが、野党分裂により辛くも延命に成功した。

 しかし1999~05年に起きた「グルテル事件」と呼ばれる一大汚職事件が再燃、5月24日、PP幹部ら29人が長期禁錮刑を含む有罪判決を受けた。彼らは、複数の企業から公共事業発注と引き換えに多額の賄賂を受け取っていた。
 さしものラホーイも今度ばかりは逃げられず、不信任された。ラホーイはアスナルと同様、右翼で、ラ米ではキューバやベネズエラに厳しかった。

 ラ米19カ国の宗主国だったスペインは、歴史的、言語的、宗教的、文化的紐帯から依然、ラ米への影響力を維持している。ラ米にとっては、トランプ米政権と歩調を合わせていた右翼ラホーイが去り、中道左翼のPSOEが政権に戻ったことで息つける空間が増えたと言える。

 カタルーニャの共和主義者にとっても、王党派のPPが政権から降りるのは意味がある。だが王政を排して共和国を復活させるのは至難の業だ。スペイン共和国は1939年、内戦に勝ったフランコによって潰され、フランコの死の直後に王政復古した。

 共和国復活が難しいため「独立を」という選択肢が出ているわけだ。ラホーイは昨年来、「独立派を抑えつけた」が、それによって記憶されるかもしれない。