2018年6月8日金曜日

 モレーノ・エクアドール大統領がベネズエラに国民投票もしくは再選挙の実施を提言▼VEN外相はOEA決議に賛成したラ米・カリブ諸国を非難▼VENの急務は原油生産回復▼グアテマラ火山爆発の死者101人に達す▼ペルー国会がケンジ・フジモリら3議員の資格停止を決める★「世界」誌がキューバ最新情勢記事を掲載 

 エクアドール(赤道国)のレニーン・モレーノ大統領はキトで6月6日、ベネズエラに対し、「5月20日の大統領選挙の正統性を実証するため国民投票をしてはどうか。さもなければ再選挙を実施してはどうか」と提言した。

 これはワシントンで開かれた米州諸国機構(OEA)外相会議が5日、ベネズエラ大統領選挙とその結果を認めず、同国のOEA加盟資格停止に向けた過程に入る」とする決議案を加盟34カ国中19カ国の賛成で可決したのを受けての発言。

 モレーノは、「ベネズエラに関する決定ができるのはベネズエラ人だけだ」とも述べ、米国をはじめとする反ベネズエラ諸国を牽制した。
 ただしモレーノは4日、マイク・ペンス米副大統領と電話会談しており、米政府の意向も汲んで、敢えてVEN説得発言に出た可能性もある。

 モレーノと今や犬猿の仲になっているラファエル・コレア前赤大統領が今VEN選挙監視で中心的役割を果たし「公明選挙だった」と評価したことへの当てつけの狙いもあるかもしれない。

 会議に参加したホルヘ・アレアサVEN外相はワシントンで6日会見し、前日の議決について、「我らのアメリカ(ラ米・カリブ諸国)にはボリバリアニズモ(シモン・ボリーバル主義=統合・連帯主義)を殺そうとするシカリオ(殺し屋)がいる」と指摘。賛成票を投じた19カ国から米加北米両国を除いた17カ国を暗に糾弾した。

 アレアサ外相が同じ会見で、「我がニコラース・マドゥーロ大統領のVEN政権はトランプ米政権との対話を望んでおり、私はマイク・ポンペオ国務長官と話し合いたい」と語った、とされる未確認情報がある。

 マドゥーロ政権は今回のOEA決議と前後して再三、OEAから自主的に脱退する手続きを昨年4月末から進めており、あと10か月余りで脱退が実現する、と強調している。

 米国以下の反マドゥーロ陣営は今回、ベネズエラ資格停止(事実上のOEA追放)の決議に必要な3分の2票(24カ国賛成)を確保できず、「資格停止に向けた過程に入る」との味の薄い決議にしか至れなかった。

 「埋蔵量世界一」のVEN原油を狙い、併せて米州での主導権回復を図りたいトランプ政権に残された決定的な手段は軍事介入。だが、これにはラ米諸国の多数派が賛成しかねており、当座の軍事侵攻はありそうもない。

    キューバ外務省は7日、OEA決議を「受け入れ難い内政干渉であり、国際法と国連憲章に反する。VEN対話に寄与しない」と厳しく批判した。

 日本一部メディアを含む反マドゥーロ国際メディアによる根拠に乏しい意図的報道で、ベネズエラらの印象は悪化しているが、マドゥーロ体制はいつになく堅固だ。

 問題は、経済の命綱である原油生産が日量150万バレルを切っていること。これを最低必要日産220万バレルに戻し、さらに300万バレルの大台を目指さねばならない。

 国際原油価格は、イラン情勢に加えVEN生産低下で上昇している。VENの生産能力は投資不足などで激減しており、VENは儲け時に儲けることが叶わない。VEN石油産業は、この深刻な矛盾に苛まれている。

▼グアテマラ火山爆発で101人死亡

 6月3日からのフエゴ火山(標高3763m)の大爆発で、死者は6日までに101人い達した。

 フエゴ火山の東にはアグア火山(3760m)があり、その鞍部は、古都アンティグア市(旧首都)と太平洋岸のケッツァール港を結ぶ幹線道路が走る。また、同港から北方の首都グアテマラ市に向かう自動車道の東側にはパカヤ火山(2552m)が噴煙を棚引かせるている。
[筆者は、この光景を何度も観てきた。今回の惨事に胸が痛んでならない。]

▼ペルー国会がケンジ・フジモリ議員らの資格を停止

 国会は6月6日、フジモリ、ギジェルモ・ボカーンヘル、ビエンベニード・ラミーレスの3議員の議員資格停止を決めた。3月、当時のPPクチンスキ大統領の弾劾阻止のため賄賂や影響力行使によって工作したのが理由。

 最大政党「人民勢力」(FP)のケイコ・フジモリ党首は実弟ケンジの議員剥奪決議案を提出していたが、定足数に至らず採択できなかった。
 姉と弟の骨肉の争いの背景には、父親であるアルベルト・フジモリ元大統領の恩赦釈放への賛否、次期大統領選挙の出馬争いがある。

 初出馬を目指す弟はクチンスキ弾劾阻止と引き換えに父の恩赦を勝ち取り、3度目の出馬を狙う姉は世論を慮って恩赦に反対した。

★本日発売の「世界」7月号(岩波書店)「世界の潮」欄に拙稿「<カストロ後>への転換期に入ったキューバ」が掲載されています。ご参考まで。