2018年6月24日日曜日

 国連人権高等弁務官事務所がベネズエラ人権状況の報告を公表▼ベネズエラ政府は「信憑性がない」と一蹴▼専門家は「弁務官事務所は対VEN糾弾の意図持つ」と批判▼チリ最高裁がピノチェー遺族に公金返還を命令

 国連人権高等弁務官事務所は6月22日、「ベネズエラにおける人権蹂躙ー終わりなきような下降循環」と題する報告書を発表。「治安部隊による殺人、略式処刑、抗議運動過剰規制、拷問、不法逮捕があった」として、国際刑事裁判所による調査の必要性を指摘した。

 同事務所は、VEN入国が許されないため、VEN国外でVEN人150人への事情聴取含む情報や資料を編集し、報告をまとめたと明らかにしている。

 これに対しベネズエラ外務省は同日、声明を発表。「信憑性がない。この種の機関に必要な客観性、公正、非恣意性に欠けている点で技術的厳しさもなく、高度に疑わしい」と、報告内容を糾弾した。

 サイド・ラアド・アルフセイン高等弁務官にありがちな制度性への過小評価がある、とも批判。「同弁務官は、過去数か月間、諸外国政府がベネズエラに科してきた経済制裁がVEN人民の経済・社会・文化的享受権を一方的に妨げる否定的影響を及ぼしている事実に触れていない。彼は、進行中の多面的な反VEN侵害の共犯者だ」と扱き下ろした。

 外務省声明はまた、「政府が提出した情報は悉く無視された」とし、メディアの虚偽報道に沿ったでっちげと非難した。

 ジュネーブの国連人権理事会に関与する専門家アルフレド・デサヤス氏も「信憑性と客観性に欠ける」と報告内容を批判した。

 同氏は2017年にベネズエラを訪問、4~6月、カラカスをはじめ同国各地で起きた反政府勢力によるグアリンバ(政治的街頭暴力)について調査、報告書をまとめた。反政府側に起因する殺人が124件起きていたことなどが記されている。

 デサヤス氏は、私の報告は無視されたと前置きし、「高等弁務官事務所や反ベネズエラの諸NGOは、私がVEN政府と<人道危機>を糾弾するのを望んでいた」と非難した。

 一方、スペイン政府は22日、VEN国営石油(PDVSA)の元保安・損害予防局長ラファエル・レイテル容疑者の身柄を米国に引き渡すことを決めた。
 同容疑者は、「組織犯罪関与と資金洗浄」で米当局から指名手配されている。米国内での不動産取引も絡んでいるという。

▼チリ最高裁がピノチェー遺族に510万ドル返還命令

 チリの独裁者だった故アウグスト・ピノチェー軍政大統領は、側近らとともに6400万ドルの公金を横領。その約3分の1弱はピノチェーの個人資産となっていた。

 同個人資産2100万ドルのうち1780万ドルは「不当な収入」とされ、その一部510万ドルの国庫への返還が命じられた。ピノチェーと側近らは、米リグ銀行などに計125の隠し口座を持っていたという。

 ピノチェー陸軍司令官らが決行した1973年9月11日の軍事クーデターから45年になる。この政変後、反軍政市民ら3200人が殺された。